シクレソニドは新型コロナウイルスに効果があるのか?薬剤師から見た印象について
皆さんこんにちは!
先日3月2日(月)に新型コロナウイルスにシクレソニドが効果があったとの症例報告がされました。
シクレソニドの症例報告の要約
興味のある方は元文献を是非ご覧ください。
元文献:COVID-19 肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した 3 例
- この症例報告では、新型コロナウイルス(COVID-19)に対してシクレソニド(オルベスコ®)を投与した3例が症状改善したとされている。
- COVID-19 の肺傷害の病理はいまだ明らかになっていないが、ウイルスが肺胞上皮細胞で増殖し、肺障害を引き起こしながら、同時に肺胞マクロファージ等に感染し局所の炎症を惹起すると考えられている。
- シクレソニドには他の吸入ステロイドとは異なり、抗ウイルス作用と抗炎症作用を持っているため、今回の症状改善につながった。
この3点が大きなポイントになるかと思います。
論文を読む前の第一感としては、「ステロイドの抗炎症作用で肺炎が和らいだんでしょ?他のステロイドでもいいのでは?」と感じてました。
しかし、論文を読んでみると、シクレソニドにある抗ウイルス作用とステロイド由来の抗炎症作用により、症状改善につながったんだと納得しました。
今後の調査で、シクレソニドの抗ウイルス作用について紹介されると有り難いなと感じています。(まだ研究段階の情報だと思うので大々的な情報公開されてないのだと思いますが…)
シクレソニドとは?
シクレソニド(商品名:オルベスコ)は吸入ステロイド喘息治療薬です。
以下に薬剤情報を掲載します。参考:オルベスコ添付文書
- 一般名:シクレソニド
- 商品名:オルベスコ
- 規格:50μgインヘラー112吸入用、100μgインヘラー56吸入用、100μgインヘラー112吸入用、200μgインヘラー56吸入用
- 薬効:吸入ステロイド薬(気道の炎症を抑え、喘息による咳の発作などを予防する吸入薬)
- 効能・効果:気管支喘息
- 注意すべき副作用:呼吸困難、嗄声、発疹、尿中蛋白、気管支痙攣、浮腫、そう痒、咽喉頭症状、咽喉頭不快感、咽喉頭疼痛
- 禁忌・原則禁忌:過敏症、深在性真菌症、有効な抗菌剤の存在しない感染症、結核性疾患、喘息の急激な悪化状態、喘息発作重積状態
シクレソニドは、喘息の治療薬として昔から使用されている薬です。
吸入器から出るガスを吸って使用する治療薬です。(エアゾール剤と言います)
注意してほしい内容としては、禁忌(使用してはいけない疾患)として「有効な抗菌剤の存在しない感染症」となっています。
COVID-19に対しても禁忌に該当するのではないかと思いますので、使用する際は注意が必要となります。
皆さんにお願いしたいこと
最近メディアで、上記症例報告が紹介されたことで「シクレソニドが新型コロナウイルスの救世主だ!」と考えて、医療機関に「シクレソニドください!」などと医師にお願いは決してしないで頂きたいと思います。
その理由として、
- 現在、シクレソニド(商品名・オルベスコ)がメーカー欠品を起こしていて、出荷調整がかかっています。
以前からシクレソニドを用いて治療されている患者さんに行き渡らない可能性があります。 - 現段階で、まだ確固たるエビデンスがない状態であるので、症状改善する保障はないです。
症例報告の中でも症例蓄積のお願いがされている状況ですので、確実とは言い切れないです。 - 何よりも症状が疑われる場合は、病院にすぐ駆け込むのではなく、まずは相談窓口に相談してから然るべき対応をお願いしたいです。
下記に相談窓口のリンクを掲載しています。各都道府県別にありますので参考ください。
新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター
以上の3点があります。
まとめ
- シクレソニドには、他のステロイド吸入薬とは異なり、抗ウイルス作用を持っていて、それにより新型コロナウイルスに効果を発揮した。
- ただし、確固たるエビデンスがないため症例蓄積の段階であり、治療効果が確実とは現時点では断言できない。
- 現段階で、医療機関にも出荷調整がかかっており、入荷しづらい状況である。
- そのため、医療機関にシクレソニドを処方するようお願いに来ることはすべきではない。
- 疑わしい場合は、まずは相談窓口に相談してから然るべき対応をしましょう。
これから、新たな症例報告がされることを期待しています。
参考
COVID-19 肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した 3 例